井の頭自然文化園“童話の森”改修計画


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場所:東京都武蔵野市栄区
年度:2008年

事業主:財団法人 東京動物園協会

全体監修:株式会社久間建築設計事務所

色彩計画:クリマ

 

色彩計画とガイドライン

井の頭自然文化園内にある“童話の森”の改修工事に合わせ、外装色彩の計画を行いました。
また、各舎の色彩計画と同時に、隣接する他のゾーンや、園路沿いに置かれたストリートファニチャーを含めた、井の頭自然文化園全体の環境色彩ガイドラインを策定しました。
色彩ガイドラインを設けることで、各施設の修繕や更新を経ても長期に渡り利用者が快適に過ごすことができる環境を確保することができます。
以下、色彩ガイドラインの概要と改修前後の様子を写真と共にご紹介します。

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色彩ガイドラインの冊子と色彩基準のページ

明確なルールを持たない色彩群
計画に先立ち、園内で用いられている色彩の現況調査を行いました。
測色(色を測ること)調査によって、多くの舎が高彩度色で塗装されており、動物や園内に植わる豊かな植栽よりも外壁の方が目立っていることを確認できました。

部分的な補修を繰り返し、その場その場での対応によって、多様な色が混在してしまっている状況を、改修を機にどのように解決するかが問われました。

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改修前の様子

 

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改修前の外装カラースキム

外装色の測色を行い、一覧表にまとめてみると、高彩度色が多く用いられていることがわかります。
賑わいを演出するために塗られたこれらの色は、明確なルールをもっていないため、やや混乱した印象を与えます。

また、高彩度色は褪色しやすく、汚れが目立つという点も問題として挙げられます。

 

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改修後のカラースキム

 

賑わい演出と環境調和のバランス
改修後は、トーン調和型の配色を行うことで、環境を整理し多色を用いつつ全体の調和を図ることとしました。各棟は同じ色相(色味)内での展開を基本とし、明度(明るさ)や彩度(鮮やかさ)に変化を与えることで単調な印象にならないよう配慮しました。

具体的な色彩計画の検討は、CGや着彩立面図の作成を通じて進めます。
柱や梁、屋根といった建築のエレメントを読み解きながら、形態を生かした配色を探りました。
親子連れの利用者が多いことから、楽しい雰囲気の伝わるカラースキムを展開していますが、舎に住む動物や周囲の自然の移ろいが映えるよう、色味を強く感じやすい寒色系の色彩では彩度(鮮やかさ)を抑えめにするなど調整を加えています。

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改修前後のカラーシミュレーション

 

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改修前後のカラーシミュレーション

 

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改修後のシミュレーション(配色指定図)

改修前後の様子

 

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01  色相を統一し、彩度を調整しました

 

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02寒色系の色相は、彩度を抑えても十分に色味を感じることができます

 

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03ベースカラーを穏やかな暖色系にすることで、舎内の動物が見やすくなりました

 

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04樹木や柵・木製の台と馴染みやすい暖色系の色彩を展開しています

 

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05 明度(明るさ)差によって建築やゲートの形態が映える配色を検討しました

 

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06幾何学的な建築形態を生かした配色を行いました

 

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07売店やカフェなど色彩ガイドラインに基づいて現在も改修計画が進められています

 

091014自然環境に馴染み、適度なにぎわいを感じさせる施設が園内に点在しています

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