建築の形態や配置・構成を生かす配色
井の頭自然文化園内にある『童話の森』の改修工事に合わせ、外装色彩の計画を行った。
また、各舎の色彩計画と同時に、隣接する他のゾーンや、園路沿いに置かれたストリートファニチャーを含めた、井の頭自然文化園全体の環境色彩ガイドラインを策定した。
色彩ガイドラインを設けることで、各施設の修繕や更新を経ても長期に渡り利用者が快適に過ごすことができる環境を確保することができる。実際、以後の改修はガイドラインに掲載されたカラーシステムが展開されている。
部分的な補修を繰り返し、その場その場での対応によって、多様な色が混在してしまっている状況を、改修を機にどのように解決するかが問われた。
外装色の測色を行い、一覧表にまとめてみると、高彩度色が多く用いられていることがわかる。
賑わいを演出するために塗られたこれらの色は、明確なルールをもっていないため、やや混乱した印象を与える。高彩度色は褪色しやすく、汚れが目立つという点も問題として挙げられる。
改修後は、トーン調和型の配色を行うことで、環境を整理し多色を用いつつ全体の調和を図ることとした。各施設は同じ色相(色味)内での展開を基本とし、明度(明るさ)や彩度(鮮やかさ)に変化を与えることで単調な印象にならないよう配慮している。
親子連れの利用者が多いことから、楽しい雰囲気の伝わるカラースキムを展開しているが、舎に住む動物や周囲の自然の移ろいが映えるよう、色味を強く感じやすい寒色系の色彩では彩度(鮮やかさ)を抑えめにするなど調整を加えている。